思う・想う・念う・憶う・懐うの違い

何かを「おもう」という心の動きは、物心ついた時からずっとあり、人は日々、何かをおもいながら生きています。この「おもう」を表現する漢字には、「思う」や「想う」、「念う」、「憶う」、「懐う」があり、日常的には「思う」が一番使われ、その次に「想う」が使われています。

ここでは、知っているようでいて意外と知らない、「思うと想うと念うと憶うと懐うの違い」について、簡単にまとめてみました。

目次:コンテンツ構成

「おもう」の意味

「おもう」は、物事に対して、ある感情や意識を持つことをいいます。これは、ある物事について考えを持つ、心に浮かべる、願う、希望する、心にかける、慕う、思いやる、回想するといったことを意味します。

「思う」の意味

「思(し)」には、思案や思考、思索、思想、思慕、意思などの熟語があるように、こまごまと考える、おもいめぐらすといった意味があります。これより、「思う」は、頭で考えたり、心で感じたりすることをいいます。なお、「思」は常用漢字なので、全ての意味で使われます。

<思うの用例>

・これでよいと思う
・思うままに生きる
・物事が思うようにいかない

「想う」の意味

「想(そう)」には、想像や予想、思想、発想、構想、瞑想、回想、感想、空想、想定などの熟語があるように、心に思い浮かべるといった意味があります。これより、「想う」は、眼前にない物事について、心を働かせる、想像することをいいます。

<想うの用例>

・祖国を想う気持ちが非常に強い
・大切なのは目を閉じて心で想うこと
・世界のどこにいても、あなたを想う

「念う」の意味

「念(ねん)」には、念願や一念、思念、記念、執念、信念、怨念などの熟語があるように、いちずに思いをこめる、いつまでも心にとどめる、思い詰めた考えや気持ちといった意味があります。これより、「念う」は、心の中で願う、一心におもうことをいいます。

<念うの用例>

・強く念う
・神仏を念う
・念うにまかせない

「憶う」の意味

「憶(おく)」には、追憶や記憶、憶測などの熟語があるように、いろいろなことを思いやる、心にとどめて忘れない、おしはかるといった意味があります。これより、「憶う」は、思い出すや追想することをいいます。

<憶うの用例>

・初恋の人を憶う
・○○先生を憶う会
・過ぎ去りし日のことを憶う

「懐う」の意味

「懐(かい)」には、懐古や懐疑、懐石などの熟語があるように、胸中にいつまでも思いをいだく、中に包みいだくといった意味があります。これより、「懐う」は、心に留めて思い慕うことをいいます。

<懐うの用例>

・異国で故郷を懐う
・天末にて李白を懐う
・君子は徳を懐い、小人は土を懐う

「思う」と「想う」と「念う」と「憶う」と「懐う」の違い

最後に「思う」と「想う」と「念う」と「憶う」と「懐う」の違いをざっくりとまとめると、以下のようになります。

・思う:頭で考える、心で感じる
・想う:心を働かせる、想像する
・念う:心の中で願う
・憶う:心にとどめて忘れない
・懐う:心に留めて思い慕う

◎「おもう」は、漢字で書く場合、「思う」が一番よく使われ、その次に「想う」が使われ、それ以外はあまり使われない。

◎「思う」は、どんな意味でも使われるのに対して、「想う」は、心を働かす場合や感情を込める場合に使われることが多い。例えば、「想う」は、小説や詩、歌詞などの創作物でよく使われる。

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