十分と充分の違い

日常生活の中で、「十分な睡眠」や「十分注意する」、「充分な対策」、「充分だった」といった言い回しを聞くことがあります。これらの中に出てくる「十分」と「充分」は、どちらも「じゅうぶん」と読む同音語ですが、どこがどう違うのでしょうか?

ここでは、知っているようでいて意外と知らない、「十分と充分の違い」について、簡単にまとめてみました。

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「じゅうぶん」の意味

「じゅうぶん」は、漢字では「十分」と「充分」と表記され、形容動詞では、満ち足りて不足のないさま、副詞では、思い残すところのないさま、それ以上あるさまなどをいいます。

「十分」の意味と用法

「十分」は、全部そろっているを意味する「十(じゅう)」と、物事の程度や状態を意味する「分(ぶん)」からなる用語です。これは、上記(じゅうぶん)の意味においては、量的に満杯になった状態を指すことが多いです。

一般に「じゅうぶん」を「十分」と表記する場合は、どちらかと言えば、数値化することができ、数量的・物理的に満たされた状態を意味し、通常、客観的に満たされたと思う時に使います。

<十分の用例>

・プレゼン前に十分な準備期間がとれた
・人員を増やせるだけの十分な売上がある
・高速道路では十分な車間距離をとるようにする

「充分」の意味と用法

「充分」は、みちるやみたすを意味する「充(じゅう)」と、物事の程度や状態を意味する「分(ぶん)」からなる用語です。これは、上記(じゅうぶん)の意味においては、量的なものではなく、感覚的に満杯になった状態を指すことが多いです。

一般に「じゅうぶん」を「充分」と表記する場合は、どちらかと言えば、精神的な満足感などのように、感覚や感情が満たされた状態を意味し、通常、主観的に満たされたと思う時に使います。

<充分の用例>

・お気持ちだけで本当に充分です
・価格を考えれば充分に美味しいと思う
・冷蔵保存する場合も充分な注意が必要だ

「十分」と「充分」の違い

最後に「十分」と「充分」の違いをざっくりとまとめると、以下のようになります。

◎「十分」と「充分」は、どちらも満ち足りて不足のないさまを意味するが、「十分」が客観的に満たされたと思う時に使うことが多いのに対して、「充分」が主観的に満たされたと思う時に使うことが多い。

◎「十分」と「充分」の使い分けで迷った時は、広く使われている「十分」を使えば問題ない。また、手紙やメールなどで感謝の気持ちを表現したい場合は、「充実」や「充足」という言葉があるように、「充分」を使うとよい。

◎文化庁の公用文の書き方資料集(用字用語例)では、「充分」を「じゅうぶん」や「十分」と書きかえるとしており、多くの公文書では「十分」が使われている。

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